極真空手の試合ではグローブを装着せず、素手素足で試合を行う為、手での顔面攻撃は禁止されています。

 

正確には顔面ではなく首から上が禁止になりますので、首にパンチしても反則になります。

 

ですが試合を観ると分かる通り、実際に顔面殴打をしてしまったとしても、いきなり「注意1」の反則を取られる事はほとんどありません。

 

これって一般人(格闘技未経験者)からしたら意味不明ですよね?

 

白帯くん
オス!自分も疑問であります!だってワザじゃなくても反則行為をしているのに、なんで注意1を取らないんでありますか?喰らった方は喰らい損じゃないですか?

 

黒帯先輩
そうなるよね!もし喰らった選手が自分の通っている道場の先生なんかだったら、なおさら「顔面殴打されたんだから注意1を取れ」ってなるよな!この辺はあいまいなんだけど、いくつか「こうだからじゃないの?」っていう事を話していこうか!

 

顔面殴打をしても審判に流されてしまう、よく分からない反則行為。

 

今回は顔面殴打はなんで流されてしまうのかを解説していきたいと思います。

 

よろしくお願いいたします。

 

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そもそもルールはどうなってんの?

 

全世界空手道連盟の試合規約

 

【反則】
a)拳・手刀・貫手・肘等手技による顔面殴打及び首への攻撃。手先が軽く触れても反則となる場合も有り得る。ただし、顔面を牽制することは自由である。

 

新極真会の全世界空手道連盟の試合規約には上記の様に記載されています。

 

簡単に言うと「手で首から上に攻撃したら反則だよ、触れただけで反則取る事もあるよ。」って事です

 

触れただけで反則を取る事もあるっていう事は、パンチが当たったら明確な反則行為という事になります。

 

最後の一文で「顔面を牽制する事は自由である」とありますが、これは解釈が微妙ですよね。

 

顔面を牽制するとは?

 

 

第26回全日本大会の4回戦、塚本徳臣選手VS七戸康博選手の試合で、実際に塚本選手が顔面に牽制を行っています。

 

開始1分10秒位の所なんですけど、一旦離れた後に、接近して突きを打つ前に塚本選手が右手で顔面に掌底(目隠しの目的)で牽制した後、左中段突きを入れています。

 

この様に、牽制しただけで当てなければ反則にはならないと明記されているので、これだけでは反則にはなりません。

 

でもコレも微妙ですよね。

 

これが「有り」なら、掌底じゃなくて顔面パンチを寸止めして相手を怯ませて攻撃できちゃうって事ですから。

 

寸止めで当てなければ「牽制」ってのもルール的にどうなんだろうと思いますが、わざわざこの一文を入れているという事は「当てたら反則、当てなきゃ何でもOK」という解釈になります。

 

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顔面殴打を認めないってどういう事?

 

谷川光選手VS岩崎達也選手

 

 

第26回全日本大会の4回戦、谷川光選手VS岩崎達也選手の試合を例に挙げます。

 

本戦で岩崎選手が2回、延長戦で谷川選手が1回、再延長戦で岩崎選手が3回顔面殴打をしています。

 

本戦、延長戦での顔面殴打はいわゆる「鎖骨打ち」の突きが流れて喉や顔面に当たったモノです。

 

極真の試合ではよく見受けられる光景です。

 

しかし再延長戦の岩崎選手の顔面殴打は、3発ともモロ気味に入っていて、その内2発は谷川選手はダウンしてしまっています。

 

そして反則として注意が取られたのは、終わり間際の1回だけです。

 

ルールには「手先が軽く触れても反則となる場合も有り得る」となっているのに、モロに入っていて反則を取らずに「続行」は基準がよく分からないですよね。

 

南原朱里選手VSインガ・ミクスタイテ選手

 

 

第12回全世界大会女子決勝戦の試合なんですが、南原選手の突きが2回、顔面殴打しています。

 

2分40秒と3分35秒ら辺ですが、2回ともインガ選手は顎に突きが当たって仰け反ってしまっています。

 

TV放送された際、解説を三好師範が行っていたんですが、「突きが流れて当たってしまってますけど、一流の選手は相手を尊敬しているのでアピールなんてしません」と解説していましたが、空手を知らない人が見たら「そういう問題じゃなくて、反則じゃないの?」と思いますよね。

 

試合内容は終始南原選手が圧倒していました。

 

塚越孝行選手VSドナタス・イムブラス選手

 

 

第9回全世界大会決勝戦の塚越孝行選手VSドナタス・イムブラス選手の試合ですが、この試合ではドナタス選手の顔面殴打によって塚越選手は前歯を折ってしまっています。

 

2分39秒辺りの所で1回、塚越選手が顔面殴打をしてしまっていますが、大体顔面殴打をするとこの様に選手同士で「スイマセン」的なカンジになって済ませてしまいます。

 

そして、これははっきり分からないんですけど、3分23秒辺りでドナタス選手が塚越選手に顔面殴打をして塚越選手が仰け反って口を閉じるシーンがあります。

 

試合はそのまま続くのですが、多分この突きが原因で塚越選手は前歯を折ったと思われます。

 

前歯を折る程の突きを喰らったら中断して様子を見たい所ですが、この試合はここまで塚越選手が優勢で押していました。

 

世界大会の決勝戦で自分が押している状況で、変に中断して流れが止まるのを嫌ったのかもしれませんが、この様に極真の試合では顔面殴打を流されてしまう事が多々あります。

 

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なんで顔面殴打は流されてしまうのか?

 

試合にならないから

 

なんで顔面殴打は反則を取らずに流されてしまうのでしょうか。

 

これはもう理由は1個で、いちいち細かく取っていたら試合にならないからです。

 

試合にならないというのは、試合が中断して「またかよ!」ってなるのもありますが、「注意」を2回取られたら「減点1」になってしまいます。

 

「注意1」の状態だと判定には何も響きませんが、「減点1」を取られた場合は「技有り」と同等程度の減点対象になるので、「減点1」を取られた状態でそのまま試合が終わったら、自分が押していても無条件で相手に旗が上がります。

 

トップ選手が減点で消える事態が起こる

 

例えば、トップ選手と無名の選手が大会の1回戦で対戦したとします。

 

相手は無名の選手で明らかな実力差があって、圧倒的に押していたとして相手がサンドバッグ状態だったとしましょう。

 

故意ではなくてもトップ選手が顔面殴打を2回してしまって、顔面殴打を厳密に取る様になって「減点1」になってしまったとします。

 

そしたら技有り以上のポイントを取らないと自動的にトップ選手は負けてしまうという事になります。

 

突きが顔面に当たったからと言って、そのつど細かく顔面殴打として反則を取っていたら「喰らったモン勝ち」の状態になってしまい、試合として成り立たなくなるので、よほどのダメージ、もしくは悪質ではない限り取らないというのが現状です。

 

武道としては良いケド、競技としては微妙だよね

 

極真をやっている人からしたら「そんなんいちいち取ってたら試合になんねーだろ!」っていう人は多いと思います。

 

僕もその考えです。

 

しかしスポーツとして、競技として考えた時に、それは正しいのかと思います。

 

例えばオリンピック競技にフルコン空手を採用させたいみたいな事であるならば、ルールはルールとしてピシッと厳格にしないといけませんよね。

 

サッカーでも、故意ではなくても手にボールが当たったら、いかなる時でもハンドになる様に。

 

100M走で、2回目をフライングをしたらウサイン・ボルト選手でも失格になる様に。

 

反則として規定で決まっているのに、コレはOKでコレは注意を取った線引きは一体どこにあるの?ってなったらダメですから。

 

そう考えると格闘技(空手は武道だけど)の試合でピッチリ規則で縛るのは難しいですよね。

 

 

まとめ

 

今回は顔面殴打について解説していきました。

 

「極真ルールでは手での顔面攻撃は禁止」っていう、格闘技やっている人なら誰でも知っているルールなのに、いざ実際に顔面殴打をしても(喰らっても)注意すら中々取ってもらえないこの現実。

 

不思議ですよね。

 

空手経験者ではない人と試合を観戦すると、絶対に「今の反則じゃないの?」って言われます。

 

「あの位なら注意にならない」と言っても「え?何で?顔面に当たってんじゃん?」ってなりますよね。

 

普通の人はそうなんです。

 

内輪の人間だけで分かり合っていては、何も知らない一般人に認知されるのは少し難しいですよね。

 

本来なら軽くカツッと当たっただけでも「顔面殴打、注意1」としなければいけないとは思いますが、難しい判断です。

 

格闘技(武道)とスポーツの垣根がこういうトコに表れます。

 

ですが、やっぱそのつど反則を取っても試合がつまらなくなるし、極真空手は武道なので現状維持で良いのではないでしょうか。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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