極真空手の試合を観ていると、鎖骨にパンチを打つ人が居ますよね。
グローブを着用しての顔面パンチ有りの試合ではあまり見られない、素手で試合を行う極真空手ならではの光景ではないでしょうか。
鎖骨打ちをする人というのは、ホントに鎖骨ばっか狙って打ってきたりするモンですが、だからと言って鎖骨打ちで相手を倒せるかと言ったら、倒す以前に鎖骨打ちで技有りを奪うすらほぼ皆無です。
じゃあ、なんでそれでも鎖骨を打つのでしょうか?
今回は鎖骨打ちによる効果と、デメリットを解説していきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
目次
鎖骨打ちによるメリットとは?
叩き込むと相手が怯む
鎖骨にパンチを当てると直接骨にダメージが入るので、反射的に相手が一瞬怯みます。
なので「怯ませる」という目的に為に打つのは効果的ではあります。
実際に怯む時間はほんの一瞬ですが、このコンマ何秒の怯みが結構有効になるので、筋肉に守られた胸を叩くのであれば鎖骨を打とうという考えが生まれるのも分かります。
相手の軸を崩せる
普通に腹や胸にパンチを打ち込んでも、相手の軸はほとんど崩せないでしょう。
筋肉で守られていますし、構えや重心自体がつま先重心の前のめりで構えているので軸を崩しにくいです。
一方鎖骨打ちは、胴体の上部末端をブッ叩くことになります。
鎖骨にパンチを当てて怯むと若干上体が起き上がるので、重心も少し上がり、ここを起点にパンチで押し込んでいくと相手を下げさせられます。
鎖骨打ちを打つ人のほとんどが、この目的ではないかと思います。
普通にパンチで下げさせるのは難しい。
だけど見た目で押していかないと判定で有利にならない。
そういう時に鎖骨を打って、怯ませると同時に上体を反らせて「真っすぐ下げさせる事」を狙って打つ事になります。
逆にデメリットは?
顔面殴打の危険性が高い
鎖骨打ちは有効である反面、顔面にパンチが流れる危険が常に付きまといます。
僕が印象に残っている試合としては、第25回全日本大会での試合で、黒澤浩樹選手 VS 川原奈穂樹選手の試合です。
川原選手はほとんどのパンチを鎖骨に打つと言っても過言ではない位、鎖骨にパンチを集中的に打つ選手です。
それが上手くハマッている時は優位に試合を進めていく事が出来ますが、この試合では黒澤選手に本戦・延長戦と顎にパンチを打ち込んでしまいます。
顔面殴打を取られたのが本線・延長戦で1回ずつというだけで、反則を取られてないけど顔面にあたっているパンチは何発もあります。
延長戦で顎にパンチをモロに打ち込まれた黒澤選手はダウンしてしまい、その後の試合の記憶は無く、本能で立ち上がって試合をしていたとの事です。
この試合は顔面殴打の反則が響き、川原選手の判定負けになりましたが、勝ち上がった黒澤選手はこのダメージが原因で次の試合(準々決勝)をリタイアしています。
第28回全日本大会の平山竜太郎選手も不運にみまわれる
これも川原奈穂樹選手の試合なんですが、第28回全日本大会で平山竜太郎選手と対戦した時の事です。
川原選手が打った鎖骨打ちが平山選手のノドに流れてしまい、平山選手がノドを抑えて下がってしまいました。
ノドに当たったパンチを審判が鎖骨打ちが効いたと判断してしまい、技有りの旗が川原選手に上がりました。
平山選手はノドを抑えながら審判を見渡しますが、そのまま判定は変わらずに試合は続行され、技有りを取られた平山選手は判定負けしてしまいました。
この大会は直接観に行きましたが、「ノド抑えてるけど、技有りなの?」って思いました。
この試合をビデオで観ると、解説している師範が「ノドに当たってるけど、旗が川原選手に上がってしまって平山選手かわいそうですね」みたいな事を言っています。
いわゆる誤審というヤツですが、当時は試合中のビデオ判定とかも無い時代なので仕方ないと言えば仕方ないのかもしれませんが、年に一回の大きな試合でこの結果はかわいそうですよね。
顔面殴打と紙一重なのが鎖骨打ちです。
鎖骨打ちでは倒せない
鎖骨打ちでは相手を怯ませて下げさせやすくする効果はありますが、鎖骨打ちで相手を倒せるかと言ったらそういうパンチではありません。
相手を後ろに下げさせやすくするだけのパンチなので、「鎖骨打ちで倒してやるぜ!」っていうダメージは見込めないので、その点は注意が必要です。
ウェイトトレーニングで鍛えたら胸筋でカバーされる
ウェイトトレーニングを行っていない人は、普通に鎖骨が浮き上がっている人が多いと思います。
ですがウェイトトレーニングを行い、インクラインプレス等で胸の上部をきちんと鍛えていると、胸筋上部が発達してくるので胸筋で鎖骨が守られてきます。
なので鎖骨を狙って打っても手前の胸筋にパンチが当たってしまい、結果鎖骨までパンチが届かないので、筋肉ゴリラには鎖骨打ちは効かないです。
まとめ
今回は鎖骨打ちについて紹介しました。
顔面無し・素手で試合という極真ルール独特の技術なのかなって思います。
鎖骨打ちは相手を下げさせる効果がある反面、顔面殴打の危険が常に付きまといます。
しかし喰らった側というのは、1発喰らった位では「顔面殴打」の反則を取ってもらえず、喰らい損の様な状態になります。
先ほど紹介した平山選手の様に、ノドに喰らって技有り取られて試合に負けたら「フザケんな!」ってなるし、腐りますよね。
サッカーとかでも、故意ではなくても手にボールが当たったら「ハンド」の様に、顔面に当たったらその時点で「顔面殴打」を取れば良いと個人的には思うんです。
上手く決まれば相手を怯ませる事が出来る有効なパンチではありますが、正確性が求められるパンチでもあるので、使うかどうかは自分の組手スタイルと相談して判断すれば良いと思います。
ちなみに僕は蹴り主体のスタイルだったので、鎖骨打ちは使いませんでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。